タイトル「2017年度 経済学部シラバス」、フォルダ「2017年度 経済学部シラバス
シラバスの詳細は以下となります。
科目名   自然エネルギー戦略  
担当教員   和田 武  
対象学年     クラス   E1  
講義室     開講学期   前期  
曜日・時限   木3,木4   単位区分    
授業形態   講義   単位数  
準備事項    
備考    
科目名(英語表記) Strategy for Renewable Energies    
授業の概要・ねらい  地球温暖化防止、化石資源および原発からの脱却などを通じて安全で持続可能な社会を実現する上で、再生可能エネルギー(自然エネルギー) 利用の飛躍的拡大が不可欠である。本講では、まず再生可能エネルギーの種類と特性等の基礎知識を習得し、地球温暖化問題、原発の危険性、地下資源の有限性等、その普及の必要性について解説する。次に、最近の世 界の再生可能エネルギー動向の特徴を原発と比較しながら論じる。さらに、再生可能エネルギー普及に先進的に取り組んできたデンマーク、ドイツ、インド等の主要諸国の再生可能エネルギー普及戦略について、担当者が調査してきた多数の具体的事例等を紹介しながら学び、最後に、日本の現状と問題点を踏まえ、普及戦略について考察する。そのなかで、とくに普及政策や普及がもたらす社会的影響、普及の担い手としての市民や地域主体(自治体等)の役割の重要性に焦点を当てて論じる。  
授業計画 4/13、20、27、5/11、18、25、6/1、8の3、4限。
ただし、6/8の4限は試験に代わる「最終レポート」を課す。
内容
1再生可能エネルギーとその特性
 再生可能エネルギーとは、自然が常に生み出すエネルギーであるが、その資源量や諸特性について再生不能エネルギーと比較しながら解説する。再生可能エネルギーの特性で重要な点は、それが地域資源であり、市民・地域主体による普及が適していることである。また、再生可能エネルギーの種類別の特徴についても述べる。
2再生可能エネルギーの必要性(1)地球温暖化問題
 化石資源利用による大気中CO2濃度の増加が主因である地球温暖化・気候変動問題は、21世紀に人類が対応しなければならない最重要課題である。これがもた らす重大影響とくに不可逆的環境破壊について解説し、それを防止するために誕生したパリ協定を実行してくうえでも、再生可能エネルギーの飛躍的普及が不可欠であることを論じる。
3再生可能エネルギーの必要性(2)原子力発電の危険性
 原子力発電は原子力の平和利用として、またCO2を排出しないエネルギーとして、世界的に利用されてきたが、原理的に大量の核分裂生成物=人工放射能を生み 出し続けるエネルギー生産であり、その処理処分方法は未確立な上、重大事故により回復不可能な放射能汚染をもたらすことを述べる。地震による危険性についても触れる。
4再生可能エネルギーの必要性(3)地下資源の有限性
 再生不能エネルギーである、石炭、石油、天然ガス、原子力用ウランについて、その資源量、埋蔵量、可採年数を示し、資源の有限性を明らかにする。また、これらのエネルギー利用によるCO2排出量やコストについても比較しながら論じる。
5世界の再生可能エネルギー動向
 最近の世界の再生可能エネルギー利用の動向を原発とも比較しながら述べる。「国際再生可能エネルギー機関」の設立やパリ協定の発効等もあり、先進国、途上国を問わず再生可能エネルギー普及が急速に進み始めている。世界の地域別および国別の再生可能エネルギー利用状況も比較する。そのなかで、伝統的再生可能エネルギーと新・再生可能エネルギーの区別とそれらの動向の違いについ ても触れる。
6各国の再生可能エネルギー普及戦略(1)デンマークにおける市民・地域主導の普及と政策
 風力発電やバイオマス利用を中心に、先駆的、飛躍的に再生可能エネルギー普及が進められてきたデンマークでは、普及の中心的担い手が市民・地域住民であり、それに よって電力買取制度のような先駆的普及政策が採用され、普及への地域の反対や批判が起きず、普及がスムーズに進んできたことを明らかにする。また、再生可 能エネルギー普及計画と温暖化防止政策との関係についても論じる。
7各国の再生可能エネルギー普及戦略(2)ドイツにおける市民・地域主導の普及と政策
 ドイツにおいても約半分の再生可能エネルギー発電手段が市民や農民によって所有されている等、市民主導の再生可能エネルギー普及が進められている。その背景 には、地球温暖化防止と原発の廃止政策があり、あらゆる種類の再生可能エネルギー普及に誰もが取り組める条件を備えた独自の固定価格買取制度を最初に導入 し、その有効性を示すことで、世界的にも普及が進む契機をもたらした。
8各国の再生可能エネルギー普及戦略(3)ドイツの再生可能エネルギー普及による地域の自立的発展
 市民・地域主導による風力発電、太陽光発電、バイオマス利用、およびこれらを通じての再生可能エネルギー100%地域・自治体づくりがドイツ各地で進行して いる。これらのうち長年にわたって実際に現地調査をしてきたシュレスヴィッヒ・ホルシュタイン州、ニーダーザクセン州、バーデンヴュルテンベルク州などの代表的事例を中 心に紹介し、そのなかで、再生可能エネルギー普及が農村を中心に地域社会の自立的発展をもたらしていることを明らかにする。
9各国の再生可能エネルギー普及戦略(4)ドイツの再生可能エネルギー普及による社会的影響
 ドイツの適切な再生可能エネルギー普及政策と市民・地域主導中心の普及方法は、飛躍的な普及成果をもたらしたが、その結果、エネルギー自給率の向上、再生可 能エネルギーのコスト低減、地球と地域の環境保全、産業発展と雇用創出、社会の協力・協同・民主主義の発展、国際貢献等の社会的好影響をもたらした。一 方、電気料金の上昇等の課題もうまれているが、その対応方法と課題克服によって生まれつつある新たな状況についても触れる。
10各国の再生可能エネルギー普及戦略(5)EUおよび主要先進国の政策と動向
 EU の地球温暖化防止政策と連動する再生可能エネルギー普及政策の概要を説明し、他の先進工業国に比してCO2削減や再生可能エネルギー普及では大きな成果を 挙げていることを示す。また、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、アメリカ等の主要先進国についても同様に解説する。現地調査を実施したスペインと イギリスについ ては、それぞれの再生可能エネルギー普及の特徴とともに、日本と同様に他国との系統連係能力が小さいスペイン等でも電力需給バランスの調整ができていることを示す。
11各国の再生可能エネルギー普及戦略(6)インド、中国、発展途上国の戦略
 最近、発展途上国のエネルギー消費やCO2排出量の増加が著しく、これらの国での再生可能エネルギー普及推進が重要性を増している。インドや中国を中心に、 最近の発展途上国の再生可能エネルギー普及政策や普及方法の特徴について解説する。とくにインドは著しい経済発展を遂げつつあるが、一人当たりのCO2排 出量は年間1トン台で低い水準が保たれており、今後の途上国の発展のモデルになり得るものなので詳細を紹介する。
12各国の再生可能エネルギー普及戦略(7)電力買取制度導入以前の日本のエネルギー政策と再生可能エネルギー普及
 以前の日本のエネルギー政策は原子力偏重、再生可能エネルギー抑制が特徴であった。再生可能エネルギー普及政策として採用された日本のRPS法は、その導入目標が 著しく低いために、普及を抑制する結果をもたらした。普及に有効な電力買取制度は2012年になるまで採用されなかった。しかし、そのような中でも、市民に よる住宅設置や市民共同発電所づくりが取り組まれた太陽光発電の導入量は2004年まで世界1位を占め続けたが、他の普及では他国より大きく立ち遅れた。
13各国の再生可能エネルギー普及戦略(8)電力買取制度下での日本再生可能エネルギー普及動向
 2012 年7月に電力買取制度が開始され、再生可能エネルギーの普及が急速に進展し始めた。しかし、その大部分が太陽光発電によって占められている。また、バイオ マス発電も普及し始めているが、日本に豊富に存在する森林資源を活用する「未利用木質バイオマス発電」に関しては、大規模発電ばかりが増加してきた。普及 の現状を把握するとともに、地域発展に結びつく小規模発電を増加する戦略について考察する。
14各国の再生可能エネルギー普及戦略(9)エネルギー基本計画と日本再生可能エネルギー普及における課題
 2014 年に策定されたエネルギー基本計画とそれに基づく2030年長期エネルギー需給見通しでは、原発重視政策が再び登場し、一方で再生可能エネルギーについては抑制的な動きが出始めている。いくつかの電力会社による接続保留問題も生じた。一方、2016年4月から電力の全面自由化も始まった。再生可能エネルギーは市民や地域主体の参加によって普及が進展する。各地の市民や自治体等のさまざまな取り組みも紹介しながら、新たな状況を踏まえて、市民や地域がなすべきことは何か、生産者、消費者、主権者の立場から考察する。
15まとめ〜再生可能エネルギー普及が切り拓く未来〜
 国内外で適切な政策がとられれば、市民・地域主導により再生可能エネルギー普及が飛躍的に進み、地域も自立的に発展する可能性がある。また、電力やガスの全面自由化や発・送電の分離により、市民・地域主体(自治体や生協等も含む)による新電力会社(送配電会社)の設立の動きもみられる。このようにして、電力やエネル ギーの 生産、供給、消費のあらゆる過程で市民・地域主体の参加が進展すると、再生可能エネルギー普及が推進され、100%再生可能エネルギーによる持続 可能な社会を実現できる可能性も生まれる。再生可能エネルギーは今後の社会発展の鍵を握っている。
 
到達目標  本講を通じて受講生諸君が、市民・地域主導の再生可能エネルギーの必要性や有効な政策と普及方法に関する知識を獲得し、自らの生活や仕事において再生可能 エネルギーに関する適正な判断と行動ができるようになる。具体的には、将来、再生可能エネルギー生産者(個人で住宅 に太陽光発電や太陽熱温水器などを設置、あるいは市民共同発電所づくりに参加)となったり、電力自由化の下で消費者として再生可能エネルギー電力購入を選択したり、主権者として政府や自治体の政策に関与(パ ブリックコメントや選挙を通じて)する。また、再生可能エネルギー普及団体の活動に参加、協力したり、支援することを期待する。    
成績評価の方法  講義期間中、数回にわたり講義に対する感想や意見等を書く「小レポート」の提出を求めるとともに、最終講義において「最終レポート」の執筆、提出を求め る。最終レポートは、当日、テーマを提示し、1時間で執筆してもらう。いずれの場合も執筆の際に参考資料等の持ち込みは自由とする。なお、配点は「小レ ポート」全体で30点満点、「最終レポート」を70点満点とする。なお、講義に関わって自らテーマを設定して書く「自主レポート」の提出を歓迎する(提出 は義務ではなく、自主的判断にまかせる)。優れた自主レポートについては、そのレベルに応じて最大10点まで成績にプラスする(評価が低ければプラスしな いこともある)。    
教科書  下記の参考書・参考文献の内、1〜5は本講の内容と密接に関係するものであり、準教科書とも言える。これらのうち、少なくともいずれか1冊は読むことを勧めるが、とくに1はぜひ読んでほしい。     
参考書・参考文献 和田武『再生可能エネルギー100%時代の到来〜市民パワーで原発もCO2もゼロへ〜』あけび書房、2016
和田武『市民・地域主導の再生可能エネルギー普及戦略』かもがわ出版、2013
和田武・木村啓二『拡大する世界の再生可能エネルギー』世界思想社、2011
和田武『脱原発・再生可能エネルギー中心の社会へ』あけび書房、2011
和田武『飛躍するドイツの再生可能エネルギー』世界思想社、2008
和田武・豊田陽介・田浦健朗・伊東真吾『市民・地域共同発電所のつくり方』かもがわ出版、2014
滝川薫・村上敦ほか『欧州のエネルギー自立地域』学芸出版社、2012
村上敦・滝川薫・池田憲昭『ドイツの市民エネルギー企業』,学芸出版社、2014
和田幸子『再生可能エネルギー先進国インド』日報出版、2010
和田武「再生可能エネルギー中心の社会は可能だ」『世界』2011年11月号
和田武・新川達郎ほか『地域資源を活かす温暖化対策』学芸出版社、2011
和田武・小堀洋美『現代地球環境論』創元社、2011
和田武・田浦健朗『市民・地域が進める地球温暖化防止』学芸出版社、2007
和田武『環境と平和』あけび書房、2009    
履修上の注意 ・メッセージ  今後の人間社会のあり方を考える上で再生可能エネルギーに関する認識は不可欠であり、受講によって未来に向かって前向きに生きる力をつけてほしい。積極 的、主体的に学ぶ姿勢での受講を望む。また、ノートをとる習慣を身につけることを勧める。受講での学びに加えて自主的に補充 や発展的学習を実施し、ノートにまとめることで、力がつくはずである。さらに、新聞等を通じてエネルギーや環境問題に関する最新情報を日常的に入手し、考 えることも重要である。
 21世紀は、間違いなく再生可能エネルギー中心の時代になる。受講生諸君が、本講での学びを通じて、その時代を先導して行く力をつけることを期待する。  
履修する上で必要な事項  再生可能エネルギーや未来社会のあり方に関心をもっていれば、とくに予備知識等は必要ではない。しかし、予め参考書や関連図書のいずれかを読んでいるに越したことはない。    
受講を推奨する関連科目 とくにない。    
授業時間外学修についての指示  講義に関わって自らテーマを設定して書く「自主レポート」の提出を歓迎する。自ら参考書や再生可能エネルギーに関する書籍、雑誌、新聞等を読んで学び、考察した結 果、近隣にある再生可能エネルギー利用施設や関連団体等を調査、見学して得た成果、居住する自治体の再生可能エネルギー政策や動向、計画等を調査、考察した結果等を 自主レポートとしてまとめるのもよいだろう。    
その他連絡事項 質問や疑問は、積極的に出してほしい。    
Copyright (c) 2008 NTT DATA KYUSHU CORPORATION. All Rights Reserved.